日本統一21では、氷室の過去が深く語られるエピソードで、舞台は氷室達の故郷である横浜となります。
氷室の過去を知る棟方という新キャラクターをきっかけに、氷室の両親や田村との思い出などが語られていきます。また侠和会が3代目体制となり、氷室が大出世するのも見所のひとつ。
ここでは「日本統一21」のあらすじから登場人物、おさえておくと楽しめる重要なネタバレから隠れた伏線まで、詳しくまとめていきます。
「日本統一21」あらすじを丁寧に解説
侠和会は三代目体制に
前作(日本統一20)で二代目会長の工藤が引退、彼の意向により川谷が三代目会長となります。
川谷による三代目体制のポイントは「年功序列は無視。実力主義で役職を決める」というもの。特にこれからは、若い力を育てていきたいと考えている様子です。
この方針により、侠和会No2ともいえる若頭の席に氷室が座ることに。年功序列でいえば若頭となるはずだった馬場は舎弟頭となり、この事が会内でも波紋を呼びます。
氷室がNo2となったことにより、田村や氷室直属の子分、氷室と仲の良い組員は大躍進。大きな力を得ます。
棟方という男
丸神会理事長補佐であり、3代目藤代組組長の棟方龍治という男が刑務所から出所します。
藤代組初代組長の藤代正光は氷室の実の父であり、棟方は初代の頃から藤代組にいました。氷室とも面識があり当時は「若」と呼び、何かと気にかけていた様子。棟方は丸神会の一員ですが、氷室を自分より身分が上(恩師の実子なので)と考えているようです。
とはいえ氷室が極道入りしたのは棟方が刑務所にいる間なので、今の姿を見てびっくり。ヤンチャだった高校生の氷室を思い出し、成長した姿に感動します。
氷室の過去
氷室が高校生の頃、母は重い病に伏せており、いつ亡くなってもおかしくない状態でした。しかし父はほどんど面会にこず、挙句の果てには離婚してしまいます。(この頃、健太は既に生まれており、姉と共に母のお見舞いにはよく訪れていた様です)
母の死に際にすら顔を見せなかった父の事は今でも許しておらず、棟方が父の話をしようとすると嫌がります。ちなみに当時から氷室と田村は喧嘩ばかりで、田村の子分である川上は当時から彼らに付き添っていた様子。
一方で町田と斉藤は、学生時代は敵対しており、町田はその中でも喧嘩が強い番長格、斉藤は群れで氷室や田村、川上を襲っていました。
ただ氷室に圧倒的な大敗を期したことで、二人とも最後は彼らの軍門に下ったようです。このエピソードから、当時から龍征会メンバーでは氷室が最強、田村がNo2だった事が伺えます。
工藤組は解体
前作(日本統一20)で工藤組幹部である財前が氷室を暗殺しようとしたせいで工藤会長は引退しました。
これにともない工藤組も解体する方向となり、工藤組に所属していた渡部達も強制的に引退となります。
渡部はしょうがない結果だと考えているようですが、部下は全く納得しておらず、工藤会長の失墜は川谷や氷室の陰謀だとわめきます。
さらに工藤組と縁の深い倉本建設社長の倉本は、「いくらでもお金だします」「どうにかして復帰しましょう」と甘くささやき、渡部の心を揺らします。
多くは語られていませんが、倉本としては癒着の強い工藤組が解体されてしまったことにより、「極道に頼れる」という立場がなくなることに不満である様子。渡部に復帰してもらい、元の関係に戻したいと考えているのだと思われます。
氷室の父と母の真相
氷室の父と母が離婚したのは、母の希望であったことが判明します。母は組ごとで忙しい父の邪魔をしたくないと考えていた様子です。
実は母が危篤となった日、父の元に兄弟分である滝島(初代丸神会会長)が窮地に立たされていると知り、単身助けにむかっていました。滝島を救うことはできたのですが、氷室の父は重症を負い、母の元には辿り付けず。この傷が元で数日後に父も亡くなります。
一方で同じ日に、田村と川上が不良連中に襲われ、田村が拉致されてしまいます。氷室はすぐに助けに行き、無事救出。田村を助けたあと母の危篤をしった氷室は病院に直行。父とは対象的に母の死に目に立ち会えました。
当時の父と自分は同じような状況であり、自分は運良く母の死に目に立ち会えただけとわかり、母の望みも理解し、父を許します。
氷室の父が滝島を救った事は現在にも大きく影響しています。(滝島にとって氷室は兄弟分であり命の恩人の息子)
日本統一22では氷室と滝島が会合を開き、日本統一23では滝島が氷室のために腰を上げます。滝島曰く、氷室は「親父に似て良い男」との事。
健太の思い
棟方の出所に顔をみせた後、氷室は横浜に住む姉のもとに向かいます。お店(姉のバー?)では、姉が一人酒に溺れて泣いています。
氷室は「健太(姉の子)の死は自分の責任で、自分が極道の道に巻き込まなければ」と謝ろうとしますが、姉の話によると、健太は常に氷室を尊敬し生き生きしていたとのこと。健太の事をおもってくれるなら、健太が信じていた氷室自身の夢を実現させてほしいと言われます。
このことで氷室はより一層、極道界日本統一にたいする野望を強めていきます。
登場人物
氷室 蓮司
【侠和会】若頭
日本統一シリーズの主人公。親友の田村と共に極道入りし、川谷の下で日本統一を目指します。
頭が切れる策士タイプで、仲間内には優しく争いを好まない。ただし敵や気に食わない事にはキレやすく暴力的になる一面もあります。
本エピソードで描かれている学生時代に母を亡くし、父とは遺恨を残したまま死別。その後は荒れていく一方であったことが伺えます。
斉藤曰く「ガタイが良いだけ」とのことですが、喧嘩の強さは学生界隈では飛び抜けていた様子。
田村 悠人
【侠和会】若頭 補佐
日本統一シリーズのもうひとりの主人公。氷室を慕い、共に日本統一を目指しています。川谷の事も尊敬していますが、どちらかといえば全ては氷室のため。
喧嘩っ早く単純な思考回路にみえるが察しが良いし、仲間思いで忠義にも厚い人物。氷室とは逆に芯は落ち着いており、氷室がうろたえたり、キレた時は全力で支えます。
学生時代から氷室とつるんでおり、「氷室を馬鹿にするやつは絶対ゆるさない」と豪語するほどの友情を培っていました。当初から喧嘩っぱやかったようですが、身を挺して子分の川上を救うなど兄貴肌でもあった様子。
川谷 雄一
【侠和会】三代目会長
氷室と田村の命を救い、極道入りさせた張本人。自身の力だけでなく人を見る目もあり、人情味もある根っからの親分肌。
若頭という身分だったが、工藤の引退により三代目会長になります。早くから氷室の実力を見抜いており、自分の側近とすることで力をつけます。
氷室を若頭にしたのは4代目を見据えてのこと。氷室の父である初代藤代会長との縁を深い恩義を感じてるところがあって人事のよう。
菅谷 謙太
【侠和会】龍征会 会長
氷室の姉の子で、氷室にとっては甥。あまり考えずに突っ走るタイプで、周りに迷惑をかけることもありました。
日本統一20で氷室の盾となって死亡しましたが、本作で語られる姉の話によると、悔いの残らない人生だったようです。
町田 駿
【侠和会】川谷組幹部
高校時代から不良として生きていた様子だが、本エピソードで描かれた氷室との喧嘩の後、氷室や田村の舎弟になった様子。
現在では、氷室や田村のためなら命も張れる立派な極道になっており、遺恨は全くないようです。
斉藤 浩樹
【侠和会】龍征会理事長
高校生の頃は金髪にサングラスをかけた不良だった様子。氷室や田村と喧嘩ばかりしていたようですが、本エピソードで描かれた喧嘩の後は、町田と同じく氷室や田村の舎弟になった様子。
現在は後輩思いで頼れる男ですが、長い刑期に入っており、勤めが終わるのは随分先になりそうです。
工藤 雅信
【侠和会】二代目会長
初代の後をつぎ、日本統一2から日本統一20まで侠和会の会長として組を引っ張ってきた人物。
本作では顔こそ登場していませんが、その腹心であった工藤組の渡部が彼を復帰させようとしています。
渡部 圭太
【侠和会】本部長(元)
工藤組系列の極道で、工藤にとっての腹心でした。出世欲が強く、ライバルである川谷のことをよく思っていません。
工藤は渡部にあまり相談せずに引退、工藤組を解体してしまったために、出世街道から外れてしまいます。
中島 勇気
【侠和会】中島組組長
氷室や田村の指示に従う、いわゆる氷室一派の一員。普段は軽快で冗談も言うような気さくな性格ですが、氷室の敵や組の敵に対してはかなり無愛想な人物。
頭の回転はそこまでよくないようですが、空気は読めるタイプ。
渋谷 セイゴ
【侠和会】三上組組長(画像左)
渋谷は三上組の頃から氷室や田村と縁のある人物。当初は渋谷のほうが先輩なので立場が上だったがすぐに追い越されてしまった。
その事を田村が気にしたこともあったが、渋谷自身は気にしておらず、自分の格を理解している様子。
大成 虎雄
【侠和会】川谷組幹部
田村にべったりくっついている武闘派の男で通称「トラ」。スタンドプレイをするようなことはありませんが、かなりの武闘派で頭の方は空っぽ。
仲間内での人情話には弱く、女の子にも弱い性格。
坂口 丈治
【侠和会】山崎組 構成員
川谷の実子で、現在は氷室の下で修行中の身。当初はただの暴れん坊でしたが、極道入りして男を磨き、今では聞き分けも良い若手有力株。
父譲りの度胸の良さを持ち、物怖じすることは殆どない様子。
馬場 伊左雄
【侠和会】舎弟頭
馬場は三代目体制のころはNo3の位置にあり、三代目体制においては、年功序列でいえば若頭(No2)になる予定でした。
しかし、川谷の若手育成計画により、舎弟頭の地位に落ちてしまいます。
野心家で単純そうに見えますが、実は懐の深いところもあり、1世代前の極道を地でいく男といった印象です。
木島 一茂
【侠和会】若頭補佐
当初は氷室や田村にとっては兄貴分の位置にいましたが、すっかり追い抜かれてしまい焦りを感じている人物。
根は実直であるものの、周りに流されやすく、いざという時の判断力に多少難があります。
瀧島 彪雄
【丸神連合】初代会長
元水神会の会長で、丸神連合の初代会長。丸神連合にとっては神の如き存在でしたが、高齢のため三田 を跡目として引退します。
氷室の父とは兄弟分の中であり、本作では命を救われたことがあることが判明しました。
棟方 龍治【NEW】
【丸神連合】理事長補佐 三代目藤代組組長
初代藤代組組長(氷室の父)の頃から藤代組に身をおくベテランの極道。川谷とは兄弟分の関係にあり、氷室のことは敬意をこめて「若」と呼びます。
古いタイプの極道ですが非常に人情味があり、氷室にとっては数少ない家族のような存在。
氷室は侠和会にいるため、立場的にはライバルの組に在籍していることになりますが、いまでも氷室には頭が上がらない様子。
藤代組は三田組系列であり、丸神連合の再編時にすでに席が用意されており、名前だけ上がっていました(日本統一18を参照)
狭山【NEW】
【丸神連合】藤代組幹部
初代藤代組のころから藤城組に務める極道の一人。主だったエピソードはありませんが、高校生の頃の氷室とも面識があります。
出所した棟方を迎えているところから考えて、棟方が不在の間は彼が藤城組をまとめていたのかもしれません。
奈村 志郎
【丸神連合】幹部(名古屋)
名古屋を管轄に持つ丸神会の幹部。過去に熱田組の香取や重光一家の一件で、名古屋は侠和会の侵入を許しており、現状に全く納得言っていません。
しかし丸神連合は「今は侠和会と戦うべきではない」というスタンスをとっており、会の考えに怒りすら感じています。
三田 太源
【丸神連合】ニ代目会長
瀧島の後をつぎ、丸神連合の二代目会長となった人物。元々は丸内組系の極道であり、鶴見は当初嫌っていました。
初代の瀧島曰く「良い男」であり、思慮深い一方、決断力もある様子。時には冷徹とも思える判断も迷わず実行できる人物です。
沖田 学
【丸神連合】幹事長
丸神連合の発足には異を唱えていましたが、秋本の説得により考えを改めた人物。元水神会系でしたが、三田が二代目となることにも不満を感じていない様子。
上への忠義には厚い一方で、それ以外の者には高圧的な態度をとりやすい印象。会のためなら身を粉にして働くタイプです。
鶴見 憲吾
【丸神連合】若頭補佐
元水神会系列の極道で、丸内系の三田がニ代目となることには納得していませんでしたが、瀧島の説得により考えを改めます。
喧嘩っ早いが思考も鋭く、田村と氷室を足して2で割ったような人物で、かなりの武闘派です。
若宮 猛
【丸神連合】丸神連合局長
日本統一1から登場している関東の極道。当時は性格の悪いイヤな人間でしたが、心変わりして今では度胸も人情もある立派な男。
秋本不在の間、三田組を支えており、氷室とも兄弟分の間柄です。
藤代 正光【NEW】
【藤代組】藤代組初代組長
今は亡き氷室の実の父で、横浜をすべる藤城組の初代組長で、棟方は彼の子分でした。
のちに初代丸神会会長となる滝島とも縁深く、今も強い影響を残しています。
妻が亡くなる直前で離婚しており、そのことで息子(氷室)と遺恨を残していました。
氷室の母【NEW】
【一般人】氷室の母
氷室が高校生の頃に亡くなった、実の母。晩年は病弱で床に伏せる事も多かった様子。
夫に迷惑をかけまいと、みずから離婚を切り出し、亡くなる直前には「父を恨まないように」と氷室に告げて逝きました。
彼女が存命のうちに、既に孫(健太)は生まれており、彼とも面識があったようです。
氷室の姉【NEW】
【一般人】氷室の姉
現在は横浜でホステスをしている、氷室の姉。健太の母でもあります。
氷室は日本統一1の頃に、「何かあったら姉に申し訳ない」といって健太の極道入りを一度は反対していました。
健太が亡くなった事で酒に溺れるも、健太が氷室を好いていた事から、氷室のことは恨んでない様子。
倉本 忠司【NEW】
【一般人】倉本建設社長
倉本建設という会社の社長ですが、工藤組との癒着が強い会社だったようです。
工藤組が解散してしまったことで、極道とのパイプが無くなった事に不満を感じており、渡部に復帰するように誘惑してきます。
金と保身の事しか考えていない業の深い人物ですが、なにかと金の力で強引に解決しようとします。
林【NEW】
【侠和会】元工藤組組員
工藤組が解散となってしまったことに納得がいかない、渡部の子分。
「工藤や渡部の引退は、川谷や氷室の陰謀」と考えており、渡部に再起をうながします。
渡部のことを真に考えているかは謎が多いですが、少なくとも氷室のことはよく想っていないようです。
まとめ
ポイント
- 侠和会の三代目体制はかなり強引で内部で摩擦が起き始める
- 渡部はカタギへ。だが、倉持建設と何か企て不穏な動きが
- 川谷は氷室を四代目に見据えている
侠和会の三代目体制により氷室の一派が台頭。若いものが次々と幹部になり、出世街道から外れた者達からは不満の声が漏れ始めます。
氷室の出世には彼の実力だけでなく、川谷と初代藤代組会長(氷室の父)にたいする深い恩義も関係しているようで、川谷は氷室を四代目にしようという腹づもりもあるようです。
一方、工藤会長が引退したせいでカタギとなってしまった渡部を中心とする元工藤組は、不満が多く再起を考えているものが多い様子。
次作「日本統一22」では青森へと舞台を移し、些細な事件から侠和会と丸神会の代理戦争が起きようとしますが、丸神会側には棟方が交渉の席に付き、氷室と交渉。その間にも渡部達は着々とクーデターの準備を進めていき雲行きが怪しくなっていきます。