日本統一20は、これまで語られていたストーリーが大きく収束する内容となっています。
まず川谷が侠和会の三代目会長に就任することで侠和会内の人事は大きく変わり、氷室や田村たちも出世街道に入ります。そして同時期に丸神連合内で起こっていた対立問題も解決し一丸となりますし、これまで度々ちょっかいを出してきた福本率いる西日本睦会との戦いも本作で終結します。
本作の見所は、健太と鶴見の男気。どちらも自分の信じる親分のため、命をかけて極道らしい死に花を咲かせようとします。
ここでは「日本統一20」のあらすじから登場人物、おさえておくと楽しめる重要なネタバレから隠れた伏線まで、詳しくまとめていきます。
「日本統一20」あらすじ・みどころ
西日本睦会との決着
西日本睦会の会長、福本といえば、これまで工藤(侠和会ニ代目会長)や氷室暗殺しようとするなどして暗躍し続けていました。
しかし遂にその思惑や居所を氷室が知ることとなり、西日本睦会の会合を襲撃。福本の一派は氷室の手で射殺され、決着が付きます。
これにより、西日本睦会は侠和会に吸収され、中川組組長の中川 至道が西日本睦会の会長となります。
鶴見の意地
丸神連合内の鶴見は水神会に強い思い入れがあり、これまで争ってきた丸内組との合併に納得いっていませんでした。特に次の会長が丸内系列の三田になる事は容認できず、これでは丸内系に飲み込まれるだけではないかと激昂状態になります。
ついには丸神連合の本部に乗り込み、静止する組員を払い除けて三田の前に立ちます。そして自分の意地を貫いで自決しようとしますが、前会長であり鶴見が慕う瀧島(元水神会会長・初代丸神連合会長)の説得により矛を収めます。
結局鶴見はクーデーターを起こすような素振りをみせつつも、水神会の極道としての生き様を貫きたかっただけで、丸神連合を潰す気はなかった様子。水神会のトップであった瀧島の願いなのであれば問題なしのようでした。
至極会は7代目黒木を迎え、九州を統一
九州極道の旗である至誠会会長の跡目争いにおいて、博多の宮島派(現六代目)と熊本の黒木派で争っていましたが、侠和会は黒木を支援します。
大きな抗争に発展する前に話し合いでの解決しようという流れになり、侠和会は「宮島が引退して黒木が七代目至誠会会長になれば矛を収める」と条件を出します。
宮島は最後まで反対していましたが、渋々飲む形となり、九州の跡目問題は解決。侠和会の傘下となります。
氷室の甥「健太」の死
氷室の甥、健太は前作(日本統一19)で氷室を庇って被弾、大怪我をしてしまい、本作でも重症を負ったまま。
しかし西日本睦会内の野城が氷室を恨む工藤組と内通、氷室たちが会合の襲撃するタイミングに合わせて氷室を暗殺する計画を実行。銃弾が放たれた時に、再び健太が身を挺して守り、死んでしまいます。
氷室は日本統一1のエピソードで健太の極道入りは、姉(健太の母)を悲しませることになるかもしれないと心配していましたが、現実のものとなっています。
しかし死に際の健太は、悔いていない様子で、「叔父さん、俺すげえ楽しかったよ…」と言い残して逝きました。
川谷が三代目会長に就任
川谷が西日本睦会との決着を伝えに工藤の元に赴くと、工藤は渡部の手下が暴走して起こした氷室暗殺事件の責任を取り引退。三代目に川谷を推すのでよろしく頼むと告げられます。
川谷は首を縦には振りませんでしたが、元々工藤は引退するつもりだったようで、今が良いタイミングを頑な。川谷もその意思を汲み取り、しぶしぶ引き受けます。
この世代交代により、川谷の派閥は一気に躍進。今後の氷室と田村の立場も大きくかわり、出世街道に乗ることとなります。
丸神連合が完全に発足
丸神連合はこれまで、丸内組系と水神会系で息が合わず、いつ分裂してもおかしくない状態でした。しかし水神会側でもっとも反発していた鶴見が瀧島(元水神会会長・初代丸神連合会長)の説得により折れた事で、内部の反発は収束。
正式に三田が丸神連合二代目会長となって連合がまとまります。内輪揉めが終結したことで関東近郊の極道は地盤が固められたので、日本統一を狙う侠和会にとっては最も大きな障害となっていきます。
この後、長らく刑務所に入っていた丸神系列藤代組の棟方が出所します。彼は川谷や氷室とも縁の深い人物であり、次作からキーパーソンの一人として活躍します。
「日本統一20」登場人物
氷室 蓮司
【侠和会】山崎組 組長
日本統一シリーズの主人公。親友の田村と共に極道入りし、川谷の下で日本統一を目指します。
頭が切れる策士タイプで、仲間内には優しく争いを好まない。ただし敵や気に食わない事にはキレやすく暴力的になる一面もあります。
氷室がキレた時は、田村以外だれも止められません。
田村 悠人
【侠和会】山崎組 若頭
日本統一シリーズのもうひとりの主人公。氷室を慕い、共に日本統一を目指しています。川谷の事も尊敬していますが、どちらかといえば全ては氷室のため。
喧嘩っ早く単純な思考回路にみえるが察しが良いし、仲間思いで忠義にも厚い人物。氷室とは逆に芯は落ち着いており、氷室がうろたえたり、キレた時は全力で支えます。
川谷 雄一
【侠和会】若頭 山崎組総長
氷室と田村の命を救い、極道入りさせた張本人。自身の力だけでなく人を見る目もあり、人情味もある根っからの親分肌。
若頭という身分だったが、工藤の引退により三代目会長になります。早くから氷室の実力を見抜いており、自分の側近とすることで力をつけます。
菅谷 謙太
【侠和会】龍征会 会長
氷室の姉の子で、氷室にとっては甥。あまり考えずに突っ走るタイプで、周りに迷惑をかけることもありました。
氷室に心酔して極道入りし、日本統一19で氷室の盾となり被弾、日本統一20でも再び盾となり、遂には命を落としてしまいます。
工藤 雅信
【侠和会】二代目会長
初代の後をつぎ、日本統一2から日本統一20まで侠和会の会長として組を引っ張ってきた人物。
自分の地位名声には固執しておらず、すべては初代の夢である極道界の日本統一のために動いています。
責任感が強く、部下思いなので侠和会内で彼を嫌う人物は殆どいませんでした。
渡部 圭太
【侠和会】本部長
工藤組系列の極道で、工藤にとっての腹心でした。出世欲が強く、ライバルである川谷のことをよく思っていません。
工藤は渡部にあまり相談せずに引退、工藤組を解体してしまったために、出世街道から外れてしまいます。
中島 勇気
【侠和会】中島組組長
氷室や田村の指示に従う、いわゆる氷室一派の一員。普段は軽快で冗談も言うような気さくな性格ですが、氷室の敵や組の敵に対してはかなり無愛想な人物。
頭の回転はそこまでよくないようですが、空気は読めるタイプ。
大成 虎雄
【侠和会】川谷組幹部
田村にべったりくっついている武闘派の男で通称「トラ」。スタンドプレイをするようなことはありませんが、かなりの武闘派で頭の方は空っぽ。
仲間内での人情話には弱く、女の子にも弱い性格。
坂口 丈治
【侠和会】山崎組 構成員
川谷の実子で、現在は氷室の下で修行中の身。当初はただの暴れん坊でしたが、極道入りして男を磨き、今では聞き分けも良い若手有力株。
父譲りの度胸の良さを持ち、物怖じすることは殆どない様子。
財前 直也
【侠和会】工藤組幹部
工藤組系列で渡部の部下にあたる人物。思慮が浅く、出世欲も強いために、氷室を敵視しています。
日本統一20では氷室暗殺計画を企て、盾になった健太を射殺してしまいます。彼の行いの責任をとって工藤は、引退を決意することとなります。
馬場 伊左雄
【侠和会】若頭補佐
馬場は三代目体制のころはNo3の位置にあり、三代目体制においては、年功序列でいえば若頭(No2)になる予定でした。
しかし、川谷の若手育成計画により、舎弟頭の地位に落ちてしまいます。
野心家で単純そうに見えますが、実は懐の深いところもあり、1世代前の極道を地でいく男といった印象です。
木島 一茂
【侠和会】幹部
当初は氷室や田村にとっては兄貴分の位置にいましたが、すっかり追い抜かれてしまい焦りを感じている人物。
根は実直であるものの、周りに流されやすく、いざという時の判断力に多少難があります。
瀧島 彪雄
【丸神連合】初代会長
元水神会の会長で、丸神連合の初代会長。丸神連合にとっては神の如き存在でしたが、高齢のため三田 を跡目として引退します。
鶴見にとって最も尊敬する人物であり、彼の暴走も瀧島が抑えました。引退後も会への影響力は大きく、しばらく陰ながらサポートしています。
三田 太源
【丸神連合】ニ代目会長
瀧島の後をつぎ、丸神連合の二代目会長となった人物。元々は丸内組系の極道であり、鶴見は当初嫌っていました。
初代の瀧島曰く「良い男」であり、思慮深い一方、決断力もある様子。時には冷徹とも思える判断も迷わず実行できる人物です。
沖田 学
【丸神連合】幹事長
丸神連合の発足には異を唱えていましたが、秋本の説得により考えを改めた人物。元水神会系でしたが、三田が二代目となることにも不満を感じていない様子。
上への忠義には厚い一方で、それ以外の者には高圧的な態度をとりやすい印象。会のためなら身を粉にして働くタイプです。
鶴見 憲吾
【丸神連合】若頭補佐
元水神会系列の極道で、丸内系の三田がニ代目となることには納得していませんでしたが、瀧島の説得により考えを改めます。
喧嘩っ早いが思考も鋭く、田村と氷室を足して2で割ったような人物で、かなりの武闘派です。
若宮 猛
【丸神連合】丸神連合局長
日本統一1から登場している関東の極道。当時は性格の悪いイヤな人間でしたが、心変わりして今では度胸も人情もある立派な男。
秋本不在の間、三田組を支えており、氷室とも兄弟分の間柄です。
福本 貞夫
【西日本睦会】会長
広島の極道で、氷室には何度も苦渋を舐めさせられており、恨んでいます。どちらかというと思考を重ねて暗躍するタイプで、一言で言うと卑怯な男。
自分の地位や名声のためなら、なんでもする性格で、氷室や工藤を暗殺しようとしますが、最後には逆に氷室に暗殺されます。
原木 秀一
【西日本睦会】幹事長
福本の腰巾着であり腹心。彼の指示のもと様々な暗殺計画が実行されましたが、いずれも失敗に終わっています。
器としても福本を一回り小さくしたような人物で傑物とは言えません。最後も福本と共に生涯を終えます。
中川 至道
【西日本睦会】中川組組長
西日本睦会に所属していますが、福本の行動には納得していない人物。暗殺計画なども知りませんでした。
福本が倒れた後、西日本睦会を継ぎ、川谷との親子盃をかわして、侠和会入りします。
野城 邦夫
【西日本睦会】野城組組長
福本を裏切り、侠和会に情報をながしていた人物ですが、実は工藤組にも情報を流しており、氷室暗殺計画に1枚噛んでいた人物です。
西日本睦会の会合において射殺されます。
宮島 嘉門
【九州・博多】六代目 至誠会会長
五代目が引退したおり、六代目を名乗りでた人物。本来至誠会の会長は博多と九州から交互に選出されるルールがあったにもかかわらず、強引に会長となってしまいました。
そのせいで、熊本の阿蘇一家ともめており、頭を悩ませています。
黒木 元誠
【九州・熊本】阿蘇一家総長 (画像左)
熊本を統べる阿蘇一家の総長で本来は、六代目至誠会会長になる予定だった人物。宮島が強引に六代目となってしまった事を不服におもっており、半期を翻しました。
侠和会がバックアップに入ったことで、力を強め、じりじりと宮島を追い詰めます。
まとめ
ポイント
- 丸神連合が遂に完全に発足
- 川谷が3代目侠和会会長へ
- 棟方を通じて、氷室の学生時代や母親の死、父の存在などが明かされる
- 渡部が不穏な動きをし始める
本作で、工藤会長が引退の運びとなり、次作からは川谷が3代目会長となります。同時期に丸神連合の方も内輪もめが終息したので、互いに組の流れが大きく変わっていきます。
終盤において川谷の口から、「棟方が出所する」という事実が伝えられます。棟方は川谷の兄弟分であり、氷室にとっては幼少期からしる実の父の子分。今後しばらく登場する重要な人物となります。
特に次作「日本統一21」では、氷室と棟方を中心に、氷室の高校生時代(藤城組会長が氷室の父だった頃)が掘り下げられており、氷室の人生観がわかる珍しいエピソードとなっています。